私のやった自然栽培

今自然栽培が非常に盛り上がりを見せています。これは非常に革新的と言いますか、やればわかりますが本質的、根本的農業であり、次世代の日本の食のベースになるべきものと感じています。これからやってみたいと思う人、すでに取り組んでいる人、または関心のある人に向けて、私のやっていた自然栽培についてお話ししてみたいと思います。

自然農法との出会い

私はある福祉施設で就労継続支援の職員として勤務していました。障害をもった利用者さん数人とゼロから開墾し、少しづつ畑を増やしていました。近くの農家さんから指導していただいて、開墾した畑で最初は慣行農法でキャベツを作りました。ですが、そこで硫化窒素を肥料として撒いたら具合が悪くなりました。そもそも私の祖父母が生業として有機農法をしており、私はよくその手伝いをしていましたから、最初から肥料と農薬に依存した農法には抵抗がありました。

で、当時若くて跳ね返りも強かったものですから、有機農法に変えちゃったんですね、勝手に。そしたらまあ普通にできたのでよかったのですが、それでは飽き足らず色々農法を探っていました。そこで出会ったのが「炭素循環農法」でした。肥料も農薬も要らない、むしろ邪魔になるという革新的な考え方に心打たれました。そうしてすぐに、千葉の山奥で実験的にこの農法をしている人たちがいることを知って会いに行って、なんとなくできそうな気がしたのでビニールハウスを使って実験を始めました。確か当時2016.7年とかで、26歳でした。

できちゃった

左が小松菜、右はほうれん草。葉野菜は土壌の状態が露骨にわかる。

そしたら、できちゃったんです。そしてその出来上がりがあまりにも神々しいものでした。小松菜でしたが、緑は本当に文字通り生きていて、金色のオーラを纏っているようでした。私は有機農法の野菜にずっと触れてきていて、本物の野菜を知っているつもりでしたが、これはなんというか、ぐうの音も出ないくらいの違いがありましたね。口にしてみると、体に抵抗なくスーッと染み込んでいくものがあります。これはもう感動しました。

大きくなったほうれん草。これだけ大きくても生食でほとんどえぐみが無い。

圃場拡大

できることがはっきりしたので、徐々に圃場を拡大しました。一応仕事としてやっていたので、部分的に自然栽培のエリアを拡大しました。その拡大したエリアでは、多品目で色々作ってみました。ハーブ系など失敗したものもありましたが、基本的には美味しい野菜が取れました。その他品目のエリアで採れた野菜は、地元のレストランと提携して取引させていただきました。また、地元のスーパーにも置かせていただきました。

最終的には7.5反の全面を自然農に切り替えました。そのほとんどを長ネギの栽培に充て、一部を多品目として使用。長ネギも2〜3Lのものがほとんどで、一番いい年はB型作業所としてはあまりに儲かりすぎました。最後の年は失敗したものの、おおむね取り組みとしては成功でした。

収穫を待つ長ネギ「龍まさり」
無施肥、無農薬でこのサイズ

理念

ここで私の個人的な理念がありました。それは「普通の野菜と同じ値段で売る」ことです。目的がいくつかあったからです。


1.自然栽培の野菜を誰もが当たり前に食べられる未来を作りたかったから

2.社会の荷物と揶揄されることもある障害者の人たちが堅実に社会貢献をして、尚社会の憧れる「本物の」仕事をしていること自体が目的だから。それが利用者のみならず、職員を育てる。

3.単純に他の野菜と同じ値段なら売れ残ることがないから。単純に経費が低いので、慣行農法よりもお金が手元に残る

愛らしいものができてゆく

私が農場で自然栽培に取り組んだのが5年でした。より良い品質のものを作ることはもちろん、障害福祉という社会的事業ということもあり、人も活かす事業というものをそこで学ばせていただきました。

この農場で採れたものは、その全てがまったく「愛らしい」輝きを本当に放っており、その新雪のような土に触れるだけで、同じスタッフの人がすごく幸せそうな笑顔を浮かべていたのを、今でも鮮明に覚えています。

秋の朝日を浴びる芥子菜と小松菜
レタスもニンジンもブロッコリーも、なんでもできた
根菜の特徴として、土がほとんど肌に残りません。これも掘り上げたそのまま。

みんなのおかげ

今振り返ると思います。みんなのおかげだったと。自分の好き勝手を許してくれた社長。自分のやりたいことのために協力してくれた周りの仲間。応援し、広報してくれた外部の人たち。

当時の私は20代で、若かった。みんなのおかげと思いつつ、どこか自分の手柄だとそれを握りしめていました。

当時としては先進的で、しかもそれを組織的に行なっていましたから、社会に与えたインパクトには大きなものがありました。農法(というか個人的仮説とその連続的経過)もどんどん教えていたので、そういう意味では良いことをしたと思っています。

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